高齢者の姿勢制御能力と転倒恐怖感および生活活動量との関連
医療系論文を理学療法士10年目の私が口語訳して紹介します。
カテゴリー
転倒予防、高齢者、姿勢制御、転倒恐怖感、生活活動量
出典
理学療法学,37巻第2号78~84,2010
論文を30秒にまとめると
口語訳タイトル
こけないために必要な能力は重心移動能力と姿勢修正能力の2つが大事
目的
姿勢保持能力において何が転倒恐怖感や生活活動量と関連するのかを明らかにする
対象
施設入所の高齢者46名(じいちゃん7名、ばあちゃん39名)、年齢80歳前後
方法
- バランスチェック
- 転倒恐怖感のアンケート
- 1か月の活動量チェック
結果
-
- 姿勢制御能力は3つに分類された
因子1:ダイナミックな重心移動能力(こけないように踏ん張る能力)
因子2:開眼、閉眼での重心動揺(立った状態での体の揺れ)
因子3:不安定な状況での姿勢修正能力(こけないために体を修正する能力)
- 体の揺れは年や怖さ、活動量とは相関しなかった
- 怖さや活動量は踏ん張る能力と修正する能力に関係した
著者の考え
- 無意識な反応には恐怖感も動けないといった感情もわかないんじゃないかな
- 年を取ると意識的に姿勢をコントロールする能力が低下する
私の考え
体の揺れは年や怖さ、活動量とは相関しなかった
僕たちは普段立っている時なんかは体の揺れを意識することはほぼないでしょ。
それはお年寄りの方も一緒で、街なんかでも「わしの体は常に揺れとってな~、手を貸してくれんか?」なんていう人見たことないよね。
それと一緒。
意識できない部分では怖さも動きづらさも感じないってことなんだろうね。
子どもでもジャングルジムや滑り台なんかで、一度怖くないって思えば、もうどんどん楽しくなって遊び続けちゃうもんね。
だから運動を指導するときはただ立つことを練習するって実はナンセンスなんだろうな(そもそも立てない人は歩くとかは課題が高すぎるけど)。
立つ能力がある人にずっと立っておく練習ってあまり意味をなさなくて、次のステージとしてどんどん動かすことが大事なんだろうな。
怖さや活動量は踏ん張る能力と修正する能力に関係した
これも結果としては当たり前で、動けないって体が思っちゃうとそこから恐怖心って自然とでてくるもんな。
だからいかにこの恐怖心や動きづらさを解消してあげるかが、我々リハビリテーションに関わるものの腕の見せ所になるんだろうね。
こけないためには、まずは動いて姿勢が崩れてもそれを修正できる能力と、自分が動ける限界幅を大きくしていくことが大事だよね。
そしてもう一つは自分の現状の能力を知るっていうことも大事になってくるね。
どの方向ならこけそうで、どの方向なら足が出にくいのか、そういったことって自分では絶対わからないし、人って必ずしもどっちかにこけやすい方向ってあるんだろうなって思う。
皆さんも普段立っている時って絶対片足に体重が多くのるでしょ。
それって自然と得意な方で支えるように体が勝手に判断している証拠なんだと思う。
だからこそ、そこの部分をいち早く把握して、転倒する前に備えてどうするかを考えていかないと、このこける恐怖感から動かなくなるといった負の連鎖を止めれない気がするな。
まとめ
一度転倒恐怖感や動きづらさを感じると、それを克服するのは本当に至難の業。
ましてそれを自分でってなると正直不可能に近いんじゃないかな。よっぽど強い意志がないと無理だよね。
それって一度意識してしまうと中々難しくて、それを意識する時って自分が思っている以上に動けなくて、危ない場面を認識したときだと思う。
そして、そうしたことが年をとることで絶対に訪れるってことがこの研究からもよくわかった。
じゃあ、それを回避するためにはどうすれば良いのか?
年をとるのは必然で、それでもこけないような体づくりをできる運動習慣が必ず大事になってくるんじゃないかな。
その運動習慣で大事なのが、重心移動能力と姿勢修正能力の2つをどう運動に取り込めるかが大事になる。
ダンスや太極拳なんかがいいんだろうな。そのほかにもただ歩くだけじゃなく、様々シチュエーションで歩くことがこの転倒恐怖感の軽減や活動量の増加につながるんだろうな。
そして、自分の体を把握しておくことも絶対今後は大事になってくるんだろう。
だからこそ、転倒予防ってただ運動するだけじゃなく、自分の体も把握するといった二つの側面が大事になってくるんじゃないかなって思うんだよね。
本日はここまで~
作者:理学療法士 中上博之