歩行の方向転換動作時における下肢関節トルク
論文の概要を理学療法士が口語訳して紹介します。
カテゴリー
転倒予防
出典
論文の中身
この論文に対するぼくの考えを口語訳してまとめます。
僕的タイトル
足がもつれないための重要なことは、股関節が教えてくれた
何が知りたかったの?
歩行中の方向転換動作時にどの関節がどのように働くのかを知る
誰にやったの?
元気で健康な若者9人(年齢21歳前後)
どうやってやったの?
- 約8m程度の歩行路を裸足で歩く
- 方向転換動作として、45°の傾きを持たせた歩行路を歩く
- 右足を支えに、左側に左足をステップするサイドステップ型(以下SS)
- 右足を支えに、右側に左足をステップするクロスステップ型(以下CS)
- SSとCSそれぞれの動作から関節にかかる力を測定する
結果
- 普通に歩くのとSSでは大きな差はなし
- CSでは支え足の右足での股関節の力の作用が大きくなった
- CSではステップを出す左足がその手前で力のコントロールをしていた
著者の考え
- 普通に歩くのとSSでは足を外側に出すだけなので大きな変化がでなかった
- CSでは足が交差するため支える側の股関節での踏ん張りが必要になってくる
- 足の踏ん張りとしては、外側に体が倒れないよう内向き(内股方向の)力がより必要となる
- 方向転換する際、出す足は事前にスピードを緩め、体重移動に備えている
私の考え
結果の項目についての自分の考えを述べます。
普通に歩くのとSSは一緒
体重移動において、普通に足を外側に出す動作はさほど難しい課題ではない。
とっさの一足がでる場合はこれで十分に対応できるし、このとっさの一足がでるからこそ、我々は転倒に至らないのだと思われる。
しかし、高齢者においてはこのとっさの一足が実は難しいのだが、これが高齢者のデータならまた結果はおのずと変わったのだろう。
少し話が変わるが、前回のブログでも書いたように、このとっさの一足を出す際の股関節の衝撃吸収力が落ち、そのまま足を外側につけたが、
耐えきれず転倒するというのも多いケースなんだろう。
足を広げる行為は実は歩くといった動作においては非常に安定性を得るうえでは効率が良い。
子どもがよちよち歩きをしだした場合は足を広げて支えれる面を大きくしているのがその一例だ。
自然の原理(重心というものが存在する地球上で)を考えるなら、支える面が狭ければ狭いほど不安定になり倒れやすくなるものだ。
そういった意味で、転ばぬ先の杖の杖はこの足を横に広げた動作と同じように支える面を増やすのに有効だということに結び付けることができそうだ。
よくお年寄りがおっしゃられる「わしゃぁ、杖が好かんからな~」には、これを説得する材料に今後使っていけそうだな。
CSでは股関節の踏ん張りが必要
単純に足がクロスする課題では支える側の股関節がそれを安定させる重要な部分になる。
これは体の(特に上半身の)偏移をより少なくし、骨盤から水平に体重を移動させることで、あまり大きく姿勢が崩れることなくバランスをとることに起因する。
そういった意味で股関節がなぜあのような球状の関節になっているのかは、この体重移動を助けるために発達してきたものなんだろう。
実は生まれてすぐの子供は股関節がこんなに丸い形状をした骨にはなってないんだってさ。人間の進化って恐ろしいね。
じゃあ、この時に必要な股関節で支える力ってどこが必要なんだろうね。それが気になる人は次を見てみて!
足の踏ん張りとは、内股方向の力が必要
足で体を支える時って実は二回に分けて、その踏ん張る力のいれ方が少し変わるのって知ってた?
まずは上にも書いたように体重移動の初めに生じる体が横に大きくバランスを崩さないようにする外側の力。
これって横から内向きに向かって押さえつける力だよね。実はここの力ってすごい大事で、高齢者では特に低下しやすいって言われている部分みたい。
次に、その姿勢を維持し、反対足がクロスできるように耐えるための内股の力が必要になってくる。
この二つがうまく安定すると、転倒をせずに足を交差することができるというのが、この論文データからも少し紐解けた感じがする。
方向転換する際、出す足は事前に体重移動に備えている
これはいわゆる予測という人の持つ動きの特性なんだろう。我々は経験上色んな場面で次に体がどう動いたら良いかということを無意識に知っている。
そして、それが勝手に起こってくるのが重要で、一度これを習得すると中々体が忘れることはない。皆さんも経験があるだろう、自転車の操作。
自転車に乗ることってはじめはすごい練習して、どっちに転ぶかわからない状態をまさに綱渡りをしているような感覚で、バランスをとりながら乗っている。
しかし、ひとたびそれを習得すると、片手を離したり、スピードを変えたり様々なことができるようになる。
これって無意識にどちらかにバランスを崩れそうになったのをハンドルの向きや姿勢を微妙にかえることで、重心移動を行い無意識にこけないようにしている最たるものだと思う。
しかし、それが高齢になると難しくなるのが皆さんは想像できますか?町で自転車を颯爽とこぐお年寄りってあまり見ませんよね。
むしろ、すれ違いざまには自転車から降りるおばちゃんがいるぐらい、そういったバランス機能って実は加齢により落ちていくんですよね。
つまりこういった機能が落ちてくると、方向転換する際にも足での重心コントールがしにくく、そのまま足を出したまま、あ~れ~状態で倒れていくことにつながるんではないだろうか。
そういった意味でも予測できること、そしてそれを無意識にできる体の状態ってすごい大事なんだろうな。
まとめ
方向転換の際に実はこける可能性の高い高齢者って多いんですよ。
だから急に呼び止められたり、何かを思い出してとっさに動く方向が変わると、それに対応できずこけていくのが自然の摂理なんでしょう。
では、どうすればそれを食い止めることができるのでしょうか。それには股関節での支える力が重要になります。
この股関節で支える場合も実は二つの特性があり、まずは外側に倒れない壁の役割をする機能と、もう一つがそれを支えるための内股の力。
これがあると少しでも転倒といった巨大な時に立ち向かえるための武器になりそうですね。まずは皆さん日ごろから股関節を鍛えることを是非心がけましょう。
そして、動きを予測するといったことも日ごろから重要で、常に何かに気をはっておく必要はなくても、そういった体の衰えを少しでも知っておくと何かしらの対処は今後できると思います。
やっぱり人は老いには勝てません。でも、迫りくる危険に対しては対処できます。ここでのブログが少しでもそれに役立ってもられれば幸いです。
では、本日はここまで。