側方へのステップ動作開始時における姿勢制御の加齢による変化
医療系論文を理学療法士10年目の私が口語訳して紹介します。
カテゴリー
転倒予防、バランス、ステップ動作、側方、姿勢制御
出典
理学療法科学21(3):267-273,2006
論文を30秒にまとめると
口語訳タイトル
ステップに必要な能力とは?若者と中高年者での違いからわかったこと
目的
サイドステップ時の姿勢制御能力の加齢による変化を明らかにする
対象
健康な女性20名(若者:10名(25歳前後)、中高年:10名(60歳前後)
方法
- 側方へのステップ動作を測定
- ステップ距離は小指から10~20cm間、20~30cm間の2パターンで測定
- 測定項目は床反力計を用いて足圧中心、重心位置を、三次元動作解析を用いて姿勢の変化を、筋電図で筋活動を測定
- それぞれの検査結果から若者と中高年者の違いを比較
結果
- 中高年者は若者に比べ安全性を重視した運動パターンを示し、体重移動に時間がかかった
- 若者と中高年者では筋活動にも違いがあった
著者の考え
- 中高年者は安全性を重視するため、動きに少し無駄ができたよ
- 動きの無駄に対して足全体に力がはいったんじゃない
私の考え
中高年者は若者に比べ安全性を重視した運動パターンを示し、体重移動に時間がかかった
転倒の一番の原因って、こけないように意識することが最も大事じゃないんだよな。
こけないためにずっと気をはって外なんか歩いてたら、障害物だらけでそれだけで疲労困憊になっちゃうよね。
歩くのってあくまでも移動手段の一つで、歩くことが目的ではなく、歩いて何をするかが大事。
そう考えると、こけないことをずっと考えるんじゃなくて、仮にこけそうになっても、とっさにそれが回避できる能力が必要なんだよね。
でも、病院なんかでもこかさないことに必死で、いざその方が自宅へ帰ると急に歩けなくなるのって、そういったことをしっかり指導できていないからなんだろうなって思うわけ。
じゃあ、こけないためにすべきこととは何なのか?
それをみるうえで、加齢によって身体的な変化がどうなるかをしっかり把握しておく必要があって、それをこの論文では教えてくれているんだよな。
若者は単なるステップ動作だけでも、より効率的に動作遂行をしようとする。
これって、無駄を省いて、どうすれば効率的に、少ない労力で運動ができるかっていうことを脳みそ自体が勝手にやっているんだろう。
そうした時に、若者はステップをしながら次にそっちへ移動する準備をしているんだろうなってことがわかる。
だから重心が足で支える側に移動するんじゃなくて、足を出す方にいち早く移動することで、よりスムーズな体重移動を円滑にしていることがわかる。
これって一見効率的だが、実は安全性に欠けるといった点も含んでいて、足を出した方にいち早く体重を移動するとかえって、体に倒れようとする外力が加わる。
だから移動といった側面だけみれば、スムーズに動けるけど、止まるってことに関しては実は不安定性を引き起こすんだろうな。
それに反して中高年者はこの体重移動をいかに安定する側にとどめておくかを考えて運動するのが特徴なんだろう。
だって動きに対応しきれないなら、あらかじめ安定する方に重心を預けようとするのがごくごく当たり前のことだから。
こうやって、それぞれの体の特徴を理解したうえで、どうすれば安定するのか、多少不安定になってもそれをコントロールできる能力があるのか、それを見極める判断力が大事になってきそうだな。
若者と中高年者では筋活動にも違いがあった
これはさっきの運動パターンの特性が違えば、それを動かし、制御する筋肉の反応が変わるのは当たり前の話だよね。
中高年者はより安定性を増すために特に足全体に力をいれて固めるのが特徴なんだろうな。
逆に若者は固くなりすぎるとかえって動きづらくなるから、無駄な力は抜いて、動きに任せて重心を移動させるっていったことが両者の違いにも表れたんだろうな。
例えるなら自尊心や羞恥心などをもった大人は恥ずかしいことができず、かえって身動きがとれなくなり、行動することができないみたいな。
それに比べ子供は自由で、なんでも恥ずかしがらず、どんどん行動できるみたいな感じかな。心も体も柔軟に動けることが一番大事だよな。
まとめ
ステップ動作だけでこんなに反応の違いがでるのであれば、これが歩いている場面に変わったらどうなるんだろうか。
また中高年者から高齢者にかわるとまた結果は大きく違ってくるんだろうな。
個人的には高齢者になればもっと動ける幅は狭くなり、より体を固めてしまうか、そのまま対応できずこけそうになるケースってのが増えそうな気がするな。
転倒に対して、こけないようにすることも大事な要素ではあるが、こけないために体がどのように動きに対して準備をし、それに対応する能力があるか。
こういったことを簡易に評価でき、転倒リスクを少しでも減らすことができたら良いなって思う。
そのためにも我々セラピストが転倒リスクをいち早くみつけ、転倒する前にできることをしっかり示していくことが大事になってくるっていうことで、自社のワンコイン転倒予防がその一つのツールになるんじゃないかなって思ってる。
最後は宣伝みたいになってしまったけど悪しからず。
本日はここまで~
作者:理学療法士 中上 博之